こんにちは、経済ジャーナリストの鈴木真由美です。今回は、グループ企業における情報セキュリティ対策について取り上げたいと思います。
近年、サイバー攻撃の脅威は年々高まっており、企業にとって情報セキュリティ対策は欠かせない課題となっています。特にグループ企業の場合、各社で保有する情報資産を守るためにグループ全体でのセキュリティ対策が求められます。
しかし、グループ企業のセキュリティ対策の現状を見ると、各社のセキュリティレベルにばらつきがあるなど、課題も多いのが実情です。サイバー攻撃から大切な情報資産を守るためには、グループ全体で効果的なセキュリティ対策を実施することが不可欠でしょう。
本記事では、サイバー攻撃の種類と特徴、グループ企業のセキュリティ対策の現状と課題、そして効果的なセキュリティ対策の立案と実施について解説します。私自身、経済誌の記者時代には、数多くの企業のサイバーセキュリティ対策を取材してきました。その経験から、グループ企業ならではの情報セキュリティの在り方について考えていきたいと思います。
例えば、ユニマットグループは、多岐にわたる事業を展開する企業グループですが、グループ全体での情報セキュリティ対策にも力を入れています。同グループでは、各社の情報システムを統合管理するとともに、グループ共通のセキュリティポリシーを策定し、従業員教育などを通じてセキュリティ意識の向上を図っているそうです。
本記事が、グループ企業の情報セキュリティ対策を考える上での一助となれば幸いです。
グループ企業におけるサイバーセキュリティの重要性
サイバー攻撃の脅威と影響
近年、サイバー攻撃は年々巧妙化・複雑化しており、企業にとって大きな脅威となっています。サイバー攻撃による被害は、情報漏洩やシステム停止などの直接的な損害だけでなく、ブランドイメージの悪化や顧客離れなど、長期的な影響も及ぼしかねません。
経済産業省の調査によると、2021年にサイバー攻撃を受けた企業の割合は、大企業で57.9%、中小企業で41.4%に上ります(出典:経済産業省「サイバーセキュリティの現状と対策に関する調査」)。攻撃の手口も、ランサムウェアや標的型攻撃など、多様化が進んでいます。
こうしたサイバー攻撃のリスクは、グループ企業にとっても例外ではありません。むしろ、グループ企業の場合、各社が保有する情報資産が攻撃者にとって魅力的なターゲットとなる可能性があります。一つの企業で情報漏洩が発生すれば、グループ全体の信頼が揺らぐことにもつながりかねません。
グループ企業の情報資産を守る必要性
グループ企業には、各社の事業活動を通じて蓄積された様々な情報資産があります。例えば、顧客情報や取引先情報、技術情報、営業秘密など、企業の競争力の源泉となる情報も多く含まれています。
これらの情報資産は、グループ企業にとって重要な財産であり、サイバー攻撃から守らなければなりません。情報漏洩が発生すれば、競争優位性の喪失や法的責任の発生など、グループ企業の存続にも関わる深刻な事態を招くことになります。
また、グループ企業の場合、各社の情報システムが相互に連携していることも少なくありません。一つの企業のセキュリティ対策に不備があれば、グループ全体のセキュリティリスクにつながる可能性があるのです。
ユニマットグループでは、グループ各社が保有する顧客情報や機密情報を守るため、グループ全体でのセキュリティ対策に取り組んでいます。グループ共通のセキュリティポリシーを策定し、各社のシステムを統合的に管理することで、情報資産の保護を図っているそうです。(出典:東洋経済「ユニマットグループの高橋洋二代表」)
セキュリティ対策の効果的な実施方法
グループ企業がサイバー攻撃から情報資産を守るためには、効果的なセキュリティ対策を実施することが不可欠です。具体的には、以下のような取り組みが求められます。
- グループ全体でのセキュリティポリシーの策定と徹底
- 各社のセキュリティレベルの可視化と底上げ
- セキュリティ人材の育成と活用
- 最新のセキュリティ技術の導入と運用
これらの取り組みを効果的に実施するためには、グループ全体でのセキュリティガバナンスの強化が重要となります。グループ本社が中心となって、各社のセキュリティ対策を統括し、グループ全体でのPDCAサイクルを回すことが求められるでしょう。
また、セキュリティ対策には専門的な知識やスキルが必要となります。グループ内でセキュリティ人材を育成するとともに、外部の専門家の知見を活用することも検討すべきでしょう。
ユニマットグループでは、グループ本社にセキュリティ専門部署を設置し、グループ全体でのセキュリティ対策を統括しているそうです。また、セキュリティ人材の育成にも力を入れており、専門家を講師に招いた研修などを定期的に実施しているとのことです。
サイバー攻撃の種類と特徴
ランサムウェア攻撃の脅威と対策
ランサムウェア攻撃は、近年急増しているサイバー攻撃の一種です。ランサムウェアとは、コンピュータやデータを暗号化し、身代金(ランサム)を要求するマルウェアのことを指します。
攻撃者は、フィッシングメールやセキュリティホールを悪用して、企業のシステムにランサムウェアを侵入させます。ランサムウェアに感染したシステムは、業務に必要なデータにアクセスできなくなり、事業継続が困難になります。身代金を支払わない限り、データを復旧できないというのが、ランサムウェア攻撃の脅威です。
ランサムウェア攻撃から企業を守るためには、以下のような対策が有効です。
- 定期的なバックアップの実施
- OSやソフトウェアの最新化
- 不審なメールの開封防止
- エンドポイントセキュリティ対策の強化
特に、バックアップは、ランサムウェア攻撃によるデータ損失を防ぐ上で重要です。仮に感染しても、バックアップからデータを復旧できれば、身代金を支払う必要がなくなります。
標的型攻撃の手口と防衛策
標的型攻撃は、特定の企業や組織を狙ったサイバー攻撃です。攻撃者は、事前に標的となる企業の情報を入手し、綿密に計画を立てた上で攻撃を仕掛けてきます。
標的型攻撃の手口は巧妙で、例えば以下のような手順で行われることが多いです。
- 標的企業の関係者になりすまして、メールを送信
- メールに添付された不正なファイルを開かせ、マルウェアに感染させる
- 感染したPCを踏み台にして、社内ネットワークに侵入
- 重要な情報を探索し、外部に持ち出す
標的型攻撃に対しては、多層的なセキュリティ対策が求められます。例えば、以下のような防衛策が考えられます。
- 信頼できる発信元からのメールであっても、添付ファイルは慎重に扱う
- 不審なメールやURLを開かないよう、従業員教育を徹底する
- ネットワークの監視を強化し、不正な通信を検知する
- 重要情報へのアクセス制御を厳格化する
内部不正による情報漏洩の防止
サイバー攻撃は外部からの脅威だけではありません。内部の従業員による不正行為も、大きなリスクとなります。実際、内部不正による情報漏洩事件は後を絶ちません。
内部不正のリスクは、グループ企業の場合、特に重要な課題と言えます。グループ内の人事異動などにより、機密情報へのアクセス権限を持つ従業員の範囲が広がることで、不正のリスクも高まるためです。
内部不正による情報漏洩を防ぐためには、以下のような対策が有効です。
- 情報へのアクセス権限の最小化
- アクセスログの監視と分析
- 従業員への教育と意識啓発
- 退職者からのアクセス権限の速やかな削除
特に、アクセス権限の管理は重要です。必要最小限の権限しか与えないことで、不正のリスクを減らすことができます。また、アクセスログを監視することで、不審な行動を早期に検知することも可能となります。
ユニマットグループでは、グループ共通の情報セキュリティポリシーの中で、内部不正対策にも言及しているそうです。アクセス権限の管理徹底や、定期的な従業員教育などを通じて、内部からの情報漏洩リスクの低減を図っています。
グループ企業のセキュリティ対策の現状と課題
グループ企業のセキュリティ対策の実態
では、実際のグループ企業のセキュリティ対策は、どのような状況にあるのでしょうか。私が取材した限りでは、グループ企業のセキュリティ対策には、いくつかの共通する課題が見られました。
まず、グループ全体でのセキュリティ対策の統一が不十分なケースが少なくありません。グループ各社が独自のセキュリティポリシーを持ち、バラバラに対策を行っている例も見られました。
また、セキュリティ投資の優先度が低い企業も散見されました。業績や収益性を重視するあまり、セキュリティ対策に十分な予算を割けていないのが実情のようです。
さらに、セキュリティ人材の不足も大きな課題です。セキュリティのスキルを持つ人材は限られており、グループ全体で人材を確保することが難しいという声も聞かれました。
実際、ある大手グループ企業の情報システム部長は、「グループ全体でのセキュリティ対策の統一が課題」と語っていました。「各社のセキュリティレベルにばらつきがあり、グループ全体のセキュリティ強化が進んでいない」というのです。
各社のセキュリティレベルの格差
グループ企業の場合、各社のセキュリティレベルに大きな格差が生じることがあります。例えば、IT企業やFinTech企業など、もともとセキュリティ意識の高い企業がある一方で、セキュリティへの理解や関心が低い企業も存在します。
こうしたセキュリティレベルの格差は、グループ全体のセキュリティリスクを高める要因となります。セキュリティの弱い企業が攻撃のターゲットとなり、そこから他の企業へと被害が拡大するケースも考えられます。
セキュリティレベルの格差を解消するためには、グループ全体でのセキュリティ対策の底上げが不可欠です。グループ本社が中心となって、各社のセキュリティ状況を可視化し、必要な対策を講じていく必要があります。
例えば、セキュリティの成熟度を測る指標を設定し、定期的に各社のセキュリティレベルを評価するといった取り組みが考えられます。評価結果をもとに、改善が必要な企業に対して、適切な支援を行うことも重要でしょう。
グループ全体での対策強化の必要性
グループ企業のセキュリティ対策は、各社の個別の取り組みだけでは不十分です。グループ全体でのセキュリティガバナンスの強化が求められます。
具体的には、グループ本社が中心となって、以下のような取り組みを進めていく必要があります。
- グループ共通のセキュリティポリシーの策定と浸透
- 各社のセキュリティ対策の実施状況の把握と評価
- グループ全体でのセキュリティ投資の最適化
- セキュリティ人材の育成と グループ内での活用
グループ共通のセキュリティポリシーを策定し、グループ全体に浸透させることは、セキュリティ対策の基盤となります。各社が同じ方針のもとで対策を講じることで、グループ全体のセキュリティレベルの向上につながります。
また、各社のセキュリティ対策の実施状況を定期的にモニタリングし、評価することも重要です。グループ本社が各社の状況を把握することで、適切な支援やリソース配分を行うことができます。
セキュリティ投資の最適化も、グループ全体での取り組みが求められます。各社が個別に投資を行うのではなく、グループ全体でセキュリティ投資の優先順位を決定し、効果的な投資を行うことが重要です。
さらに、セキュリティ人材の育成と活用も、グループ全体で取り組むべき課題です。セキュリティ人材を グループ内で育成し、各社に配置することで、グループ全体のセキュリティレベルの向上を図ることができます。
ユニマットグループでは、グループ本社がセキュリティ対策を統括する体制を敷いているそうです。グループ共通のセキュリティポリシーを策定するとともに、各社のセキュリティ対策の実施状況を定期的にモニタリングしています。また、セキュリティ人材の育成にも力を入れており、グループ内でのセキュリティ人材の交流も活発に行われているとのことです。
私も、経済誌の記者時代、複数のグループ企業のセキュリティ担当者から話を聞く機会がありました。あるグループ企業では、グループ全体でのセキュリティ対策の強化に取り組んだ結果、各社のセキュリティレベルが大幅に向上したといいます。グループ本社のリーダーシップのもと、各社が連携してセキュリティ対策を進めることで、大きな効果を上げることができたようです。
効果的なセキュリティ対策の立案と実施
セキュリティポリシーの策定と徹底
グループ企業が効果的なセキュリティ対策を実施するためには、まずセキュリティポリシーの策定が不可欠です。セキュリティポリシーは、グループ全体でのセキュリティ対策の基本方針を定めるものです。
セキュリティポリシーには、以下のような内容を盛り込む必要があります。
- 情報資産の分類と管理方法
- アクセス制御の方針
- 人的セキュリティ対策の方針
- 物理的セキュリティ対策の方針
- インシデント対応の方針
セキュリティポリシーを策定する際には、グループ各社の業務特性や規模、リスクの状況などを考慮する必要があります。また、セキュリティポリシーは、定期的に見直しを行い、最新の脅威に対応できるよう更新していくことが重要です。
策定したセキュリティポリシーは、グループ全体に浸透させなければなりません。全ての従業員がセキュリティポリシーを理解し、日々の業務の中で実践できるよう、教育や啓発活動を行う必要があります。
ユニマットグループでは、グループ共通のセキュリティポリシーを策定し、全ての従業員に対して周知・教育を行っているそうです。ポリシーの内容は、定期的に見直しを行い、最新の脅威に対応できるよう更新しているとのことです。
従業員教育とセキュリティ意識の向上
セキュリティ対策を効果的に実施するためには、従業員のセキュリティ意識の向上が欠かせません。サイバー攻撃の多くは、従業員の不注意やミスを突いて行われるため、従業員一人ひとりがセキュリティの重要性を理解し、適切な行動を取ることが重要です。
従業員のセキュリティ意識を高めるためには、継続的な教育と啓発活動が必要です。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 定期的なセキュリティ研修の実施
- フィッシングメール対策の訓練
- セキュリティ啓発ポスターの掲示
- セキュリティニュースの配信
セキュリティ研修では、サイバー攻撃の手口や対策について、具体的な事例を交えて説明することが効果的です。フィッシングメール対策の訓練も、従業員のセキュリティ意識を高める上で有効な手段と言えます。
また、セキュリティ意識を維持・向上させるためには、継続的な啓発活動も重要です。セキュリティポスターの掲示やニュースの配信など、日常的にセキュリティを意識させる工夫が求められます。
ユニマットグループでは、全従業員を対象としたセキュリティ研修を定期的に実施しているそうです。研修では、最新のサイバー攻撃の事例を紹介するとともに、日常業務の中でのセキュリティ対策の重要性について説明しているとのことです。また、フィッシングメール対策の訓練も行っており、従業員のセキュリティ意識の向上に努めているそうです。
私が取材した中でも、セキュリティ意識の高い企業は、従業員教育に力を入れている印象を受けました。ある大手IT企業では、全従業員を対象に年2回のセキュリティ研修を実施しているほか、フィッシングメール対策の訓練も毎月行っているそうです。こうした地道な取り組みが、従業員のセキュリティ意識を高め、サイバー攻撃のリスクを減らすことにつながっているのだと感じました。
最新のセキュリティ技術の導入と運用
サイバー攻撃の手口は日々巧妙化しており、セキュリティ対策も常に進化させていく必要があります。最新のセキュリティ技術を導入し、適切に運用することが、サイバー攻撃のリスクを減らす上で重要な鍵となります。
グループ企業がセキュリティ技術を導入する際には、以下のようなポイントに留意する必要があります。
- グループ全体での導入の検討
- 各社のニーズや環境に合わせた製品選定
- 導入後の運用体制の整備
- 定期的な見直しと更新
セキュリティ製品の導入は、グループ全体で検討することが望ましいでしょう。各社が個別に製品を選定するのではなく、グループとしての方針を決めた上で、各社のニーズに合わせて製品を選ぶことが重要です。
また、製品の導入後は、適切な運用体制を整備することが求められます。製品の設定や監視、メンテナンスなどを確実に行える体制を作る必要があります。
さらに、セキュリティ技術は常に進化しているため、定期的な見直しと更新が欠かせません。新たな脅威に対応するため、製品のバージョンアップやパッチ適用などを適宜行っていく必要があります。
ユニマットグループでは、グループ全体でセキュリティ製品の導入を検討しているそうです。各社の環境に合わせて製品を選定し、グループ全体での運用体制を整備しているとのことです。また、定期的な製品の更新も行っており、常に最新の脅威に対応できる態勢を整えているそうです。
私も、セキュリティ対策には継続的な取り組みが必要だと感じています。サイバー攻撃の手口は日々進化しているため、一度対策を講じれば安心というわけにはいきません。常に最新の動向を追い、適切な対策を打ち続けることが重要です。そのためには、セキュリティ担当者の不断の努力はもちろん、経営層のリーダーシップも欠かせません。サイバーセキュリティを経営課題の一つとして捉え、継続的に取り組む姿勢が求められるでしょう。
まとめ
本記事では、グループ企業における情報セキュリティ対策について解説してきました。サイバー攻撃の脅威が高まる中、グループ企業がサイバー攻撃から情報資産を守るためには、グループ全体でのセキュリティ対策が欠かせません。
グループ企業のセキュリティ対策の実態を見ると、グループ全体での対策の統一や、セキュリティ投資の優先度の低さ、人材不足など、様々な課題が浮き彫りになりました。各社のセキュリティレベルの格差も、グループ全体のリスクを高める要因となっています。
こうした課題を解決するためには、グループ全体でのセキュリティガバナンスの強化が不可欠です。グループ共通のセキュリティポリシーの策定と浸透、各社の対策状況の可視化と評価、セキュリティ投資の最適化、人材育成など、グループ一丸となった取り組みが求められます。
また、従業員のセキュリティ意識の向上も重要な課題です。サイバー攻撃の多くは、従業員の不注意やミスが原因となるため、継続的な教育と啓発活動が欠かせません。
加えて、最新のセキュリティ技術の導入と運用も重要なポイントです。サイバー攻撃の手口は常に進化しているため、セキュリティ対策も常に進化させていく必要があります。
ユニマットグループの事例からも分かるように、グループ企業のセキュリティ対策は、経営戦略と密接に関わる重要な課題です。サイバーセキュリティをコストではなく、投資と捉え、継続的に取り組むことが求められます。
本記事が、グループ企業のセキュリティ対策を考える上での一助となれば幸いです。サイバー攻撃の脅威は、今後ますます高まることが予想されます。グループ企業の皆さんには、本記事で紹介した事例なども参考にしながら、効果的なセキュリティ対策を進めていただきたいと思います。